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野牛重兵衛

Author:野牛重兵衛
会社を実質的に自主廃業し『自由人』となる。
自ら『脱藩浪士』と名乗り自由な日々を生きることにした。
常陸国在住
60歳・・・還暦である。
今もって独身!(笑)
これからも独身!(大笑)
今さら、もう無理!(大笑)

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軍旗はためく下に
軍旗はためく下に (中公文庫 A 13)軍旗はためく下に (中公文庫 A 13)
(1973/01)
結城 昌治

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軍旗はためく下に

この本は5つの話から構成されている。
話は著者が関係者にインタビューするという形で書かれている。

1.敵前逃亡・奔敵
ある兵隊が敵と遭遇して負傷、自決を図るが果たせず、気絶したところを捕虜となる。
そこから脱走して日本軍憲兵隊に自首したが・・・
軍法会議で敵前逃亡と奔敵の罪で死刑を宣告される。
占領地で好きな女が出来て、その家に行き帰る途中で敵と遭遇したわけだが、これが敵前逃亡ということになってしまった。
奔敵とは「敵に奔(はし)る」という意味だが、意識不明のところを捕虜になったのだから、敵に奔ったわけではないのだが・・・
脱走して戻ってきたのだから問題なかろうと思ったら死刑判決。
この兵隊は処刑前に自ら首を吊って自殺したという。

2.従軍免脱
従軍免脱とは自ら怪我をして従軍を免れようとする行為のことである。
ある兵隊が前線を顧みず後方で酒色に浸る連隊長や、軍の糧秣を私物化する主計将校の所業に腹を据えかねて、自分の薬指を切って血書をしたため師団長に直訴した。
しかし・・・・その直訴の内容は無視され、反対に、自分の指を切った行為は従軍免脱であるとして軍法会議で即日死刑となってしまったという話。
軍隊では直訴は通じないらしい。
腐敗を告発しようとしたら・・・・法によって逆に裁かれてしまったのである。

3.司令官逃避
この話はフィリピンのバギオあたりで敗戦間近な頃に起った事件らしい。
陸軍刑法では「司令官が敵前で尽すべき所を尽さずに隊兵を率いて逃避したときは死刑」とされている。
ある地点で守備についていた中隊が補給も途絶。
中隊長は飲料水のある地点まで部隊を独断で一時退避させた。
ところがそこに連隊副官がやって来て勝手に守備位置を離れたことを責めて中隊長を滅多打ち。
自決するか軍法会議にかけるかと脅す。
罪名は「司令官逃避」である。
中隊は別命あるまで守備位置に戻ることになるが、その別命が来ないまま、その地で中隊は全滅した。
その頃には他の部隊は別命で全て撤退していたという。
副官は、わざとこの中隊だけを全滅させたのだろうか?
中隊を死に追いやった副官は、戦後復員してアメリカ軍の出入り商人になり金儲けをしたという。
この変わり身の早さよ。
戦後、この中隊の生き残りと偶然会った元副官は当時のことを忘れたふりをしたという。
が・・・しかし・・・まもなく何者かに刺殺されたとか。

4.敵前党与逃亡
ある軍曹が数名の下士官と何らかの理由で隊を離れたため、それが戦没者名簿に「敵前党与逃亡罪により死刑」と書かれた。
しかし、事実は生還者の記憶でもハッキリしない。
本当に逃亡したのか・・・・誰も知らない。
本当に正式な軍法会議で死刑の宣告を受けて処刑されたのか・・・誰もハッキリしない。
彼の死因は・・・誰も知らない。
彼の最後は・・・誰も見ていない。
にもかかわらず、なぜか戦没者名簿に「逃亡兵」の烙印が押されている。
逃亡兵の汚名を着せられたために靖国神社にも合祀されず、遺族は遺族年金がもらえない。
本当に逃亡兵だったのだろうか?
生還者を訪ねて証言を集めるが、生還者たちの証言は煮え切らないもの。
このインタビューの推移を読んでみると、いかに汚名をそそぐことが困難なのかがわかる。

5.上官殺害

南のある島での出来事。
部下に横暴の限りを尽くす小隊長がいた。
おかげで部下の中には死に至らしめられた者も出る。
下士官兵は中隊や大隊本部に小隊長の横暴を訴えるが無視され、ついにある軍曹を中心とした数名が、この小隊長を殺害する。
戦後、捕虜になり、この殺害事件が明るみに出る。
上官を殺害した関係者が、この事件を知っている上官を「戦犯」で脅したため、反対に「上官殺害」を公表されてしまったのである。
敗戦となり陸軍刑法は無効になっていると関係者は思っていたらしいが・・・
実際は連合軍の了解の下に陸軍刑法は敗戦後しばらくは存続していたのである。
このため犯行者のうち3名が死刑となり、あとの3人は無期懲役で復員前に現地で病死した。
上官殺害は事実であり、処罰されてもやむをえまいが・・・・
部下を虐待して死に至らしめた小隊長は不問。
その小隊長の暴虐を知っていながら放任していた中隊長や大隊長は責任を問われていない。
なぜ上官を殺害しなければならなかったのか・・・・などは関係ない。

この5話、いずれも実際にあった事件に基づいて書かれている。
しかし、筆者は「あくまでもフィクションとして書いたので、誤解を避けるため架空の地名を随所に用いている」と“あとがき”に書いている。
どうしてフィクションとして書いたのだろうか?
本篇は「中央公論」に昭和44年から45年にかけて連載されたものに若干の筆を加えて出された。
戦後25年ぐらいではノンフィクションとして出すにはまだ早すぎるということか?
「誤解を避けるため」と筆者は書いているが「誤解」とは何を指すのか?
フィクションにしたため、どこまでが事実なのかがわからなくなってしまっている。
しまいには、そんな「事件」も架空ではないかと思われてしまうのではなかろうか?
なんとも残念だ。

戦争は人間同士の殺し合い。
だから、戦争はやめよう・・・・というだけでは甘いと思う。
戦争とは仲間同士、友軍同士の、こういう悲惨な「事件」も起こさせるのである。
それを知るには良い本だと思う。

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読書 | 19:53:55 | Comments(0)